近代写真の父と呼ばれるウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット(1800–1877)の仕事をまとめた一冊。
タルボットは、感光紙の上に植物やレースを直接置いて像を写し取る「フォトジェニック・ドローイング」や、紙ネガから複数のポジ像を作るカロタイプを開発し、後の写真につながるネガ・ポジ方式の基礎を築きました。写真の発明における最重要人物のひとりである一方、ひとりの写真家としての評価は、長くその技術的功績の陰に隠れてきたともいえます。
写真家としての活動期間に制作した写真は5,000点以上。自邸とその周辺の風景や建築、家族や友人の肖像、植物標本、レースや布、身の回りの品々を撮った静物など、その対象は驚くほど多岐にわたります。まだ「写真で何を撮るのか」という定型すらなかった時代に、タルボットは写真という新しいメディアで何ができるのかを次々と試していきました。
科学、数学、天文学、政治、考古学など幅広い分野で活動した19世紀を代表する知識人でもあり、その探究心は写真にも強く表れています。1844年から1846年にかけては、写真の可能性を広く伝えるため、写真を実際に貼り込んだ画期的な書物『The Pencil of Nature(自然の鉛筆)』を刊行しました。
本書には、自邸ラクック・アビー周辺で撮影された代表的な風景写真や、写真史上最初期のネガに加え、あまり知られていない作品や未発表作品も収録。紙ネガ特有の柔らかな像や、光によって物そのものの痕跡が残される初期写真の魅力とともに、タルボットの仕事の幅広さを知ることができます。
単なる「写真の発明者」ではなく、写真というメディアの可能性を探り続けた、ひとりの写真家としてタルボットを捉え直すモノグラフ。
Geoffrey Batchenによる解説。
[condition] Used, Good
[Artist] William Henry Fox Talbot
[Publisher] Phaidon
[size] 223 × 277 mm 128p
[Published] 2008